「なぜマルチ商法をやってはいけないのか」
「マルチ商法のなにがダメなのか」
「具体的に、どのような法律違反で、どんなリスクがあるのか」
これらの理由を明確に答えられますか?
「絶対に儲かるから」
「簡単にお金が稼げるよ」
「今始めれば、他の人より有利だよ!」
と甘い言葉で誘われてマルチ商法を始め、
「マルチをやっていたことを知られて、ご近所でヒソヒソ言われた」
「友達がいなくなった」
「借金をしてしまった」
など、マルチ商法をやったばっかりに人生を狂わせてしまう人は少なくありません。
マルチ商法はイメージが悪いのに、なぜ多くの人が騙されてしまうのでしょうか。
この記事では、マルチ商法はイメージが悪いだけではなく、法的、社会的、仕組みにも問題点があるということをお伝えします。
マルチ商法がダメな理由をしっかりと理解して、うまい話に騙されないようにしてください。
マルチ商法(ネットワークビジネス)とは?
まず「マルチ商法」とは何かについて知っておきましょう。
マルチ商法は、会員が新規会員を誘い、その新規会員が更に別の会員を勧誘する連鎖により、階層組織を形成・拡大する販売形態である。
引用元:Wikipedia
これだと少しわかりにくいですね。
簡単に言うと、
「友達に商品を販売する」+「会員登録させる」
→「その友達が、さらに違う友達に商品を販売し、会員に勧誘する」
このように、ピラミッド型に組織を大きくしていく仕組みが「マルチ商法」です。
そして、この仕組みにこそ大きな問題点があります。
ねずみ講と似ているけど違う、一応「合法」なのがマルチ商法
ちなみに、マルチ商法というのは通称で、正式名称は『連鎖販売取引』です。
昭和の時代に流行った「ねずみ講」は法律で禁止されていますが、マルチ商法は合法です。
ただし、厳しい規制がかかっています。
逆に言えば、法律で厳しく規制されなければならないほど、とても危険なビジネスであるともいえます。
詳しくはこちらの解説をご覧ください。
⇒『ねずみ講、マルチ商法、ネットワークビジネスは何が違うのか?』
マルチ商法は、ねずみ講と違って「実際の商品」を取り扱っているのが特徴です。
そのため、マルチ商法を始めると商品を買ってくれる人を探すことになり、手っ取り早く友達に買ってもらおうとして「友達をなくす」ことになるわけです。
マルチ商法の商品といえば「化粧品」「健康食品」などのイメージが強いと思いますが、商材は現在多様化しています。
・USBメモリや情報商材(FXの必勝法などの解説や、取引プログラムなど)
・仮想通貨など(ものなしマルチ)
・下着
・アロマオイル
・何らかのサービス(会員権など)
など、一見マルチ商法とわからないものも多くなっています。
不当な価格だったり、実態が無いもの、儲けを強調するもの、次の人の勧誘が必要なものなどは特に注意してください。
ピラミッド型の仕組みの問題点
それでは、マルチ商法の最大の問題点である「仕組み」について解説します。
マルチ商法に誘って来る人は「2人だけ勧誘すればいい」など、簡単にできることをアピールしてきます。
でも、ちょっと考えてみましょう。
(1)1人目が2人を勧誘する(1+2=3)
(2)2段階目の人が2人勧誘する(1+2+2×2=7)
(3)3段階目の人が2人勧誘する(1+2+4+4×2=15)
(4)4段階目の人が2人勧誘する(1+2+4+8+8×2=31)
(5)5段階目の人が2人勧誘する(1+2+4+8+16+16×2=63)
(6)6段階目の人が2人勧誘する(1+2+4+8+16+32+32×2=127)
このように勧誘が上手くいった場合、倍々ゲームで会員数が増えていきます。
見ればわかるとおり、6段階目でも厳しいですが、28回勧誘が成功する頃には日本の人口を超えてしまうのです。
つまりマルチ商法とは、「仕組みが破綻することは最初からわかっている商売」です。
「カンタンに」「楽に」お金を稼げるのはピラミッドの上位にいる人だけ。
下にいけばいくほど勧誘する人がいなくなって、稼げず、お金を吸い取られるだけの仕組みになっています。
そもそも、自分が勧誘した2人がそれぞれ新しく2人を勧誘できるとも限りません。
破綻するとわかっている仕組みで「成功者になれる」「簡単に儲かる」と勧誘してくる「マルチ商法」。
どう考えても、参加していいことはありません。
それどころか、自分が恨まれる立場になる可能性もあるのです。
マルチ商法の様々な問題は、この仕組みが原因であると言っても過言ではないと私は感じています。
それでは、具体的にどんな問題があるかを紹介していきます。
マルチ商法の「法的な問題点」
マルチ商法(連鎖販売取引)は、違法ではありませんが特定商取引法によって厳しく規制されています。そのため、多くのマルチ商法では表向きは「コンプライアンス遵守」を謳っています。
でも、実際には、ほとんどの販売員は法律を守って活動していません。
結局特定商取引法(特商法)を守らず勧誘するため、社会的な問題へと発展しているのです。
それでは、問題となっている違法行為を見ていきましょう。
ブラインド勧誘(特商法違反)
ブラインド勧誘とは、「本来の目的を告げずにアポイントを取り勧誘すること」です。
「久しぶりにお茶しない?」
「相談があるんだけど」
と誘われて行ってみたら勧誘だったというケースはよくあります。
(余談ですが、久しぶりに連絡が来るということは、もうすでに勧誘する人が尽きていて、ビジネスがうまくいっていない証拠でもあります)
「起業セミナーへ行こう!」
「スゴい人に会わせてあげる」
「お料理会へ行こう!」
「BBQやるからおいでよ!」
など、マルチ商法の勧誘とわからないように名目を変えて勧誘するケースも多く見受けられます。他にも、
・マッチングアプリ
・街コン
・街で道を尋ねられる
・SNSで突然DMが届く
など、友達や知り合いではなくても、勧誘目的で誰かが近寄ってくることも多くあります。
気になったり、誘われて嬉しかったりで、つい行きたくなることはあると思います。
でも、「久しぶりの友達」「あまり親しくなかった人」「何の縁もない人」からの勧誘は要注意です。
誘いに乗らないのが一番ですが、信頼できる友達だしマルチではないと思うので会いたい、とのことでしたら、いつでも逃げられる準備をしてから会うようにすると安心です。
場所については、人目があり出入り自由で、自力で帰れる場所をオススメします。
また行き先を家族や友人に告げておくことも、帰りやすくなる(迎えに来てもらえる)ので根回ししておきましょう。
大人数に囲まれて説得されないように、信頼の置ける人を誘って、こちらも2人以上で会うというやり方もあります。
とにかく、まずは「自分が取り込まれないこと」を第一にしてください。
※特商法についての詳細はこちら→「特定商法取引法ガイド」
薬機法違反(旧薬事法)
マルチ商法では、効果・効能についての虚偽・誇大広告などを含めて医薬品まがいの商品を売っている場合がありますが、薬機法については元々厳しい規制が多々あります。
「がんが治った」
「シミが取れた」
など、医薬品と誤認させるような表現は禁止されています。
それでも「市販品は危険」「病院は製薬会社と利権でつながっている」など、根拠のないデマで健康被害を拡大させるような危険な行為が跡を絶ちません。
がんなどの病気の治癒だけでなく「発達障害が良くなった」「コロナに感染しない」など、個人の感想レベルでの体験を謳って商品を販売している悪質なケースもあります。
困っている人を喰い物にするのも、マルチ商法の特徴です。
被害を避けると同時に自分が人を苦しめる側に回らないように、怪しい勧誘に乗らないことが大切です。
※薬機法についての詳細はこちら→薬機法
不実告知(特商法違反)
不実告知は「契約を結ぶ際に、客観的事実と異なる説明をすること」です。
「必ず儲かる」
「誰でも月収100万円になる」
など、あたかも契約すれば儲かるといったような夢のような話は魅力的ではありますが、現実にはそんな簡単にお金が稼げることはありません。カンタンに儲かる話は、その辺で売っていたりはしないのです。
経営や商売のスキルやノウハウが売られていることもありますが、多くは素人が上位販売員(アップ)に言われたとおりにやっているだけなので、法律を守らないどころか特商法さえ知らない販売員も多くいます。
これらの違法行為によって、借金をしてしまったり健康被害が出てしまったりと、社会的な問題が発生しています。
※これ以外にも、マルチ商法では、たくさんの違法行為が行われています。ぜひこちらを参考にしてください。→「アムウェイだけじゃない!マルチ商法の違法な行為をわかりやすく解説」
違法な勧誘方法で誘われたら、話を聞く必要はありません。
ハッキリ断ってその場を離れることが大切です。
また、「友達がマルチにハマってしまった」と困っていて助けてあげたいと思ったら、まずは自分自身を守る知識を身につけることから始めましょう。
【ニュース】
2021年11月11日、京都府警に、特定商取引法違反の疑いでアムウェイ会員が逮捕されました。
→違法勧誘疑いで2人逮捕 アムウェイ入会めぐり 京都府警
マッチングアプリで知り合った女性に、アムウェイに入会させる目的を告げずエステサロン(公衆の出入りする場所以外)に連れていき勧誘したため、逮捕となったようです。
これは、先ほど紹介した「ブラインド勧誘」にあたります。
このように、マルチをやっていて法律違反すると逮捕されることも有り得ます。また、今回逮捕された人は公務員でした。副業のはずだったのに、人生台無しですよね。
こんなことにならないようにするには、マルチ商法をやらないこと。そしてもし買ってしまっても勧誘する側に回らないことです。
※勧誘についての参考記事はこちら
note→「マルチ商法に勧誘されたらやって欲しいこと」
マルチ商法の「社会的な問題点」
次に、個人的な被害だけではない、マルチ商法の社会的な問題点を詳しくお伝えします。
マルチ商法は、単にイメージが悪いという話ではなく、実際に被害にあって困っている方が多くいます。そのため、警視庁・消費者庁・各自治体等で注意喚起がされています。
具体的にどんな問題が起こっているか知っておけば、マルチ商法に騙されにくくなります。
たとえば、こんな例があります。
借金をしてまでマルチ商法を続けてしまう
マルチ商法をしている人が、それを始めた動機は「お金を稼ぐため」だったはずです。なのに、何故お金を失ってまでマルチ商法を続けてしまうのでしょう。
本末転倒だということに、まずは気付いて欲しいです。
元々、マルチ商法でお金を稼げるのは上位のごく一部の人だけです。
ですが、いつか成功することを夢見てマルチ商法が辞められない人もいます。
・毎月の条件を満たすために、売る相手がいないのに在庫を抱える
・上位主催のセミナーの参加費を支払う
・友達を勧誘する時の交通費や飲食代がかかる
このように、お金を稼げない上に借金してまで活動をしているケースがたくさんあります。でも実際は、手元の商品は借金してまで買いたいものではないはずです。
※マルチ商法のお金事情はこちら⇒「ネットワークビジネスは本当に儲かるのか?お金の事情を大公開!」
他にも、
・初期費用として20万円~30万円を請求される
・200万円の投資金額を「分割払いができる」と言って消費者金融で借金させる
などの悪質なケースもあります。
お金を稼ぐために高額なお金がいるというのはおかしな話です。
それなら、近所でアルバイトを始めた方が最初から収支はプラスになりますよね。
でも、マルチ商法に勧誘されて勧誘してきた相手を盲信している状態だと、「これは将来への投資!」という言葉に疑問を持てず、借金してまで続けてしまうのです。
盲目的な思考になり、理屈で考えられない
マルチ商法をしている組織では、セミナーやイベントなどが頻繁に開催されています。
無料だったり有料だったりしますが、セミナーなどに何度も足を運ぶうちに、マルチ商法特有の偏った思考(マルチ理論)に染め上げられてしまいます。
このセミナーは、上位者が色々なテクニックを使って開催しているため洗脳されやすくなっています。閉鎖された空間で集団心理を用いての内容になります。
そして一人一人が、自分や組織の間違い、失敗に気づかず、疑問を持たないように工夫がされています。
他にも、マルチ商法の仲間とグループで交流していると「勧誘できたんだ、すごいね!」など褒められて承認欲求が満たされたり、「その気持わかるよ~!」と共感されたりするので「自分をわかってくれるのはこの人達だけ」となってしまい、ズブズブと依存の沼にハマってしまいます。
やがて「マルチ商法だけが正解!」とマルチ理論を鵜呑みにし、自分で正常な判断ができない思考停止の状態になってしまい、こうなるとなかなか抜け出せません。
外部からの忠告や正しい情報を受け入れられなくなり、「マルチ商法こそ真実だ!」と盲信してしまうのです。
この盲目的な思考が原因で今自分が抱えている問題を直視することができなくなり、人間関係・お金・時間を失ってしまうのがマルチ商法の問題点です。
友達がいなくなる
「マルチ商法の勧誘をすると友達がいなくなる」というのは、よく聞く話ですよね。
「久しぶりにお茶しよう!」とマルチに誘うことを隠して勧誘するのは、法律違反の上にその友達にも不信感を抱かせます。誘われた側は善意で会いに来てくれた人です。
ある意味本当の意味で「友達」であり、信用すべき人なのです。
それなのに、勧誘をしてしまっては「騙された!」となり、不信感から距離を置かれてしまいます。さらには、マルチ商法に誘わなかった友達ともうまくいかなくなります。
相手からマルチなんて辞めるように説得されて拒否したり、マルチ商法を否定されて逆ギレしたりと人が変わってしまうので、どんどん友達が離れていきます。
このように、マルチ商法を始めると今まで築いてきた人間関係が崩壊してしまうため、結果としてマルチの仲間しか残らず、どんどん依存してマルチ商法から離れられなくなっていくのです。
家庭が崩壊する
マルチ商法で家庭が崩壊するケースもたくさんあります。
その理由は様々ですが、マルチ商法の活動にのめり込んでしまって普段通りの生活が送れなくなることが大きな要因です。
・セミナーやイベントに毎日のように参加するため家を空けがち
・商品購入や活動費のために、生活費を使い込んでしまう
・家にいても電話やメールばかりして家族と過ごさない
・家事が疎かになる
・子どもをどこかに預けっぱなしにする
・家の中で使うものがマルチ商法の商品ばかりになる
・家族の意見を聞き入れない
・家族にも商品を使うように無理強いする
このように、家族に反対されると家族のことを「足を引っ張る人」「成功の邪魔をする人」と認識するようになるため、話し合いすらできない状況になってしまいます。また、こういう状態になっても仲間が慰めてくれるため、もっとマルチ商法にのめり込んでいきます。
こうして離婚や縁を切られることも多々ありますが、そもそもマルチ商法を始めたのは、お金を稼いで自分が幸せになったり家族を幸せにするためではなかったでしょうか?
「お金が欲しい」という気持ちの先にあったものを思い出して、こうなる前に何とか引き返して欲しいと思います。
被害者から加害者へ
マルチ商法の大きな問題点は「加害者になる」ことです。
高額な商品を買わされただけなら被害者で終わります。
でも、「いい情報だから」「良いものだから」と大切な人に勧めて商品を買わせることで、いつの間にか加害者になってしまいます。
「マルチ商法に勧誘する」=「加害者になる」ということにはなかなか気づけません。
騙すつもりはなかったとしても、マルチ商法を盲信して加害者になっていることに気づかないのはとても怖いことです。
そして、マルチ商法を辞めたいと思っても、「自分は加害者じゃない」と思いたいがために辞められないケースもあります。
マルチ商法は「始めないこと」が一番大事です。そして「途中で引き返す」ことも勇気が要ることで、それを成し遂げられるのは凄いことです。
なんとなく「今のままではダメな気がする」と思っている人がいたら、ぜひこのページを勧めて欲しいです。
誰かが加害者を続けないことで未来の被害者を減らすことができますし、自分という1人の被害者を救うことにもなるのです。
【狙われる学生や若者】「マルチ商法」で人生を棒に振らないために
2022年4月1日、民法改正により、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
18歳から成人になるということは親の同意なしで契約ができるということ。
そのため、高校生や大学生にマルチ商法(ネットワークビジネス)の魔の手が伸びる危険性があります。
最近は、友達から直接勧誘されるだけでなく、SNSを通じて誘われたり、街で声をかけられたり……と勧誘方法も多岐にわたります。いつ誰がマルチ商法の沼に引きずり込まれてもおかしくありません。
まして高校生や大学生は、「マルチ商法」というものをまだ知らないことも多いはずです。よく分からないまま契約してしまい、これからの人生をダメにしてしまうかもしれません。
お子さんが被害に遭わないためにも、マルチ商法はどんなものか、何がダメなのかを是非知っておいていただきたいと思います。
高校生、大学生に限らず、マルチ商法を知らない方、なんとなくイメージが悪いとは思っていても詳細を知らない方も、知識を身につけておくことで被害が防げます。
マルチ商法に引っかからないこと、引っかかりそうな人を止めることは、自分や家族、そして社会を守ることでもあります。甘い誘いに乗らないよう、お互いに気をつけ合っていきたいですね。
さいごに
マルチ商法をやっている人たちはみんな、「良いことばかり」と言います。
「仲間が増えた」
「人生観が変わった」
「収入が増えた」
など、一見するとうらやましくも感じますが、マルチ的な思考に支配されているので現実を直視できず、ただ夢見心地になっているだけです。
海外旅行に行ったり、高級外車に乗ったりと羽振りのいい生活をしている人もSNSなどで見つかりますが、勧誘するためにそう見せかけているだけというケースも多々あります。
本当にお金に余裕のある生活ができるのは、最初に仕組みを作った上位の人のみなのです。
それでもマルチ商法の被害が後を絶たないのは、将来に不安を感じていたり、今の生活に不満があったりなど心の隙につけ込まれてしまうからです。
不安や不満がある時こそマルチ商法に狙われやすいので、気をつけなくてはいけません。
また、マルチ商法をしている人は「ネットの情報は、成功できなかった人のヒガミ」などと言って正しい情報を否定しますが、マルチ商法を否定する情報はほぼ正解と思って間違いないです。
また、いろんなところにマルチ商法の罠があるので、いつ誰がマルチ商法にハマってもおかしくありません。マルチ商法にハマってしまって後悔している人を責めず、また自分が間違えてしまっても落ち込みすぎずに、元の生活を取り戻して欲しいです。
一度マルチ商法にハマってしまうと、抜け出すまでにかなりの時間と労力がかかります。
大切な時間・お金・人間関係を失わないためにも、マルチ商法の問題点をしっかりと理解して、騙されないように気をつけましょう。