2021年11月11日、特定商取引法(特商法)違反の疑いでアムウェイ会員が逮捕されたことが話題になりました。
逮捕容疑は「マッチングアプリで知り合った女性に、アムウェイ入会への勧誘であることを隠してエステに誘い入会するよう勧めた」というものです。
マルチ商法の勧誘で『勧誘目的であることを隠して誘い出す』ということは珍しくなく、今回の逮捕劇によってこの勧誘の仕方が違法勧誘だったと知った人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「どんな勧誘の仕方が特商法違反(違法)の疑いがあるのかわからない」という方のために、特商法違反に接触していると思われる違法勧誘例をくわしくお伝えします。
あなたが勧誘されたときに役に立ちますので、被害にあわないためにもぜひ知っておいてください。
勧誘目的であることを隠して誘う
マルチ商法に勧誘されたことがある方のほとんどは、この「勧誘目的を隠して誘う」勧誘方法で誘われているのではないかと思います。
「ブラインド勧誘」とも言われていますね。
冒頭にも書きましたが、アムウェイ会員もこの勧誘目的を隠して誘ったとする特商法違反の容疑で逮捕されています。
マルチ商法に勧誘する場合、特定商取引法ではこのように規制されています。
氏名などの明示(法第33条の2)
引用元:特定商取引法ガイド
統括者(連鎖販売業を実質的に掌握している者)、勧誘者(統括者が勧誘を行わせる者)または一般連鎖販売業者(統括者または勧誘者以外の連鎖販売業を行う者)は、連鎖販売取引を行うときには、勧誘に先立って、消費者に対して、次のような事項を告げなければなりません。
1.統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者の氏名(名称)(勧誘者、一般連鎖販売業者にあっては統括者の氏名(名称)を含む)
2.特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨
3.その勧誘にかかわる商品または役務の種類
逮捕されたアムウェイ会員がマッチングアプリで出会った女性に、
・アムウェイの販売員である
・化粧品や日用品、健康食品などを扱っている
・会員登録や商品の購入などに金銭的負担がある
を伝えてから誘っていれば逮捕されなかったかもしれませんね。
では、どのような誘い方が特商法違反(違法勧誘)になるのか、よくある勧誘トークを例に紹介していきます。
あなたが勧誘されたものに当てはまるものがないかチェックしてみてください。
ブラインド勧誘の事例10選
ノリと勢いに押されて「よくわからないけど、とりあえず行ってみようかな?」と、誘いに乗ってしまいそうなフレーズばかりなので注意が必要です。
親しい友人や先輩、ママ友などからこのように誘われると断りにくいかもしれません。
「久しぶり!元気にしてる?突然だけど、あなたに教えてあげたい話(いい話)があるの。積もる話もあるし、一度あってお茶しましょう♪」
「すごい人(成功者)のセミナーが聞けるから一緒に行こう!こんなチャンスめったにないよ!」
「いまエステの練習してるんだけど、練習台になってくれない?」
「すごく素敵な人に出会って人生変わったの!あなたにも絶対会わせてあげたいから一緒に会いに行こう!」
「投資の勉強してるんだけど、すごくためになるから投資セミナーに行って一緒に勉強しよう!」
「スポーツサークルに行くようになって友だちが増えたの。終わってから食事したり、みんな親切だからすごく楽しいよ!あなたもサークルに入らない?」
「このあたりで良いお店を探してるんだけど、どこかいいお店教えてくださ~い!よかったら一緒に行きましょう!」(街で声をかけられる)
「お茶会(お料理会)を自宅でやってるんだけど、子育ての悩みとか相談もできるからうちに遊びに来て!」
「友達に食事会に誘われて行ってみたんだけど、食事が終わってから占いもしてもらったの。おいしい食事もいただけるし占いもすごく当たるからあなたも一緒に行きましょう!」
「自宅にいながら主婦でも稼げる方法見つけたよ!まず、このオンラインサロンに参加してみて!オンラインサロンは無料だよ!」
あなたが誘われたときに言われたフレーズはありましたか?
どの誘い方も「会社名」「勧誘目的であること」など、特商法で規制されている必要事項はひと言も言わず、マルチ商法の勧誘だとわからない誘い方が特徴です。
スポーツサークルも占いも勧誘するための口実ですが、その日は勧誘せず、まず仲良くなって心を許した頃に勧誘するという手口もあります。
仲良くなって1年たった頃に勧誘されて、ようやくマルチ商法だと気づいた…という人も少なくありません。
ヨガや育児サークルなどに誘われて参加し、初めの頃は楽しくすごしているだけだったが、仲良くなって半年経った頃、食事をしているときに勧誘された。
何度かお茶をするようになり仲良くなったママ友に、家計の悩みや将来の不安を相談している話の流れで、いつの間にか勧誘されていた。
半年経っていようが、話の流れであろうが、どちらの場合も
・「会社名」
・「勧誘目的であること」
などを告げていないので特商法違反(違法勧誘)となります。
「たまたまお金の話になったからマルチ商法の話をしただけで、勧誘するつもりはなかった」
と言い訳する人がいますが、仮にそうであってもマルチ商法の話をする前に
「マルチ販売員であること」
「化粧品やサプリなどを扱っていること」
「あなたを今から勧誘する」
ことを伝えなければいけません。
騙し討ちのように「勧誘であることを隠して誘う」やり方は特商法違反(違法勧誘)ですから、消費生活センター(188)に通報しましょう!
自宅など公衆の出入りする場所以外で勧誘する
知らない方もいるかもしれませんが、勧誘目的を告げず誘い自宅など公衆の出入りする場所(誰でもが出入りできる場所)以外での勧誘は、特商法で禁止されています。
▶公衆の出入りする場所以外の場所とは◀
例)
・事業者の事務所
・個人の住居
・ホテルの部屋や会議室
・公共施設等の会議室
・カラオケBOX
・貸し切り状態の飲食店等
禁止行為(法第34条)
引用元:特定商取引法ガイド
特定商取引法は、統括者または勧誘者が契約の締結についての勧誘を行う際、取引の相手方に契約を解除させないようにするために嘘をつくことや威迫して困惑させるなどの不当な行為を禁止しております。具体的には以下のようなことが禁じられています。
3.勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)によって誘った消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘を行うこと。
自宅でお料理会と称して勧誘したり、「すごい人に会わせてあげる」とアップ(上位販売員)のタワマンなどに連れて行き勧誘するのは違法勧誘にあたります。
起業セミナーだと偽って連れていき、セミナー会場で勧誘することもダメですね。
騙して誘い出したうえに誰もが出入りできない場所で勧誘されるのは、断りにくいですしとても怖いことです。
仲のいい友達の家だとしても、特商法違反であることには変わりありませんので注意してください。
【事例紹介】
case.1 ビジネスセミナーに参加したつもりが、実際はネットワークビジネスの説明会だった。
引用元:特定商取引法ガイド(事例紹介)
「マルチ商法ではない」は事実と違う(不実告知)
「マルチ商法じゃないよ!ネットワークビジネス(又はMLM)だよ!」
と、イメージが悪いマルチ商法とは別のビジネスだと言って勧誘していますが、ネットワークビジネス・MLM・マルチ商法はどれも同じ連鎖販売取引のことなので、「マルチ商法じゃない!」というのは事実と違うということになります。
事実と違うこと、すなわち嘘をついて勧誘することは禁止されています。
禁止行為(法第34条)
1.勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、商品の品質・性能など、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること。
引用元:特定商取引法ガイド
わざわざ「嘘をついて勧誘してはいけない」などと言わなくてもわかりそうなものですが、マルチ商法の勧誘トークには様々な事実と違うこと(嘘)が散りばめられています。
・マルチ商法ではない
・誰でも簡単に稼げる
・人を紹介するだけで儲かる
・絶対に成功できる
「絶対に誰でも稼げる」と保証されているビジネスはありません。
確かにマルチ商法で稼げている人もいますが、一部のトップの人達だけです。
あたかもビジネス会員みんなが稼げているかのように謳って勧誘したり、事実と違うことを言って勧誘するのは特商法で禁止されています。
マルチ販売員にとって不都合な事実を伝えない(事実不告知)
事実と違うことを告げるのもダメですが、勧誘する側にとって不都合な事実(重要事項)を告げないことも特商法で禁止されています。(禁止行為・法第34条)
では、勧誘する側(販売員)にとって不都合な事実(重要事項)とはなんでしょうか。
代表的な例は
・クーリング・オフができること
・ビジネス活動を行う際、セミナー代・交通費・商品代などの負担金があること
・誰でも簡単に稼げないこと
どれも契約(登録)をする前に伝えなければいけない事実(重要事項)です。
勧誘する側(販売員)から見てみると、簡単に退会されては困りますし、お金がかかることや簡単に稼げないことを伝えたらビジネスに参加しない恐れがあるので知られては困ることばかりです。
そのため、会員を一人でも多く獲得するために事実をウヤムヤにしていますが、不都合な事実を伝えないことは特商法で禁止されています。
断ったのにしつこく勧誘してくる
誘いを断ったのに、何度もしつこく勧誘することは禁止されています。
(※連鎖販売取引では商品を売る行為が含まれているので、訪問販売に関する法律も適用されます。)
再勧誘の禁止等(法第3条の2)
引用元:特定商取引法ガイド
事業者は、訪問販売を行うときには、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように、努めなければなりません。
消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。
ですが、はっきりと断っているにもかかわらず、何度もしつこく誘ってくることがありませんか?
例えば、
・ちゃんと話を聞けば誤解が解けるから、もう1度話を聞いてほしい。
・私の話だけでなく、セミナーに来てちゃんと話を聞いて!
・私が尊敬している人に会ったら誤解が解けるから、一緒に会いに行こう!
・ちゃんとセミナーを聞いて、自分の目と耳で確かめてみて!
など、「きっと誤解しているから断っているんだ」という勝手な解釈をしてしつこく誘ってくることが多いと思います。
しかしどんな理由であれ断っているのですから、販売員は断わられた時点で誘うことをやめなければいけません。
・もう1度だけ会って!
・セミナーだけでも来て!
と、断られたのにしつこく誘うのは特商法違反です。
さいごに
あなたが勧誘されたときの状況に当てはまる事例はありましたか?
・勧誘目的を隠して誘う
・自宅やセミナー会場など公衆の出入りする場所以外で勧誘する
・事実と違うことを告げる
・事実(重要事項)を告げない
・断ったのにしつこく誘われる
どれか1つは、当てはまるものがあったのではないでしょうか?
上記の5つ以外にも、
・書面不交付(概要書面)
・契約解除の妨害
・誇大広告
などがあります。
参照:特定商取引法ガイド
違法勧誘をしていたら逮捕されることもあるということは、アムウェイ会員の逮捕でも明らかになっています。
現在マルチ商法でビジネス活動をしている人は、アップに教えてもらった方法が特商法違反ではないか、事実から目を背けず確かめてください。
一人でも多くの被害者を減らすためにも違法勧誘をされたら通報していただき、間違っても契約(登録)しないようにしてください。